冒頭、著者は習慣を身に付けることを「複利運用」と同じイメージと紹介する。
30日ごとに1つ身に付けた「よい習慣」が、自分にとっての「元本」。
それを単純に積み重ねるのでなく、「複利」で運用することで、
いつの日か爆発的なリターンにつながっていく・・・。
仮に、毎月1つずつよい習慣を身に付けることを5年間続ければ、
60のよい習慣が備わる計算だ。
このように、複数身に付けたよい習慣が、「複利効果」を生み出し、
人生をがらりと変えるというのが、著者の主張。
脳にとって、よい習慣、わるい習慣の区別はない。
ただ、一定期間以上くりかえされたから、習慣化しただけ。
この習慣化を利用すれば、少ない労力で、目指す結果を手に入れることができる
かもしれない。
習慣化については諸説あるが(21日説、1か月説、3か月説、6か月説)、
著者によれば、続けたいと思う習慣の種類によって異なるという。
レベル1.行動習慣
勉強、日記、片付け、節約、家計簿など日々の日課や行動習慣。これらは
比較的、柔軟にかえる必要があるため、習慣化への期間は1か月。
レベル2.身体習慣
ダイエット、運動、早起き、禁煙、筋トレなど
身体レベルの変化は、行動習慣にくらべて、人への影響が大きい
習慣化への期間は3か月必要になる
レベル3.思考習慣
論理的思考力、発想力、ポジティブ思考、ストレス発散思考など、
思考・性格にかかわる習慣
その人の根幹にかかわるので、変化に対する抵抗が最も大きい。
習慣化へは6か月が必要
ベストセラー「7つの習慣」を引用しつつ、著者が説明するには、
「習慣化のプロセス」はロケットの打ち上げに似ている。
最大の難関は、大気圏を抜けることで、そのために膨大なエネルギーが必要。
これは、重力が地上へと引き戻そうとするからだ。
しかし、いったん宇宙空間に出てしまえば、重力の法則から解放され、
少ないエネルギーで進むことが可能になる。
本書では、行動習慣を身に付けるステップとして
@反発期:すぐにやめたくなる
A不安定期:予定や人に振り回される
B倦怠期:じょじょに飽きてくる
の3ステップに分け、最初のステップで4割が挫折するとしている。
これは上記のロケット打ち上げとおなじ原理だ。
「習慣化の3原則」は以下の通り。
@1つの習慣に絞る【同時ににいくつもやらない】たとえばダイエットなら、運動と食事制限を同時にはじめることが多いが、これは
失敗する確率が高い。2、3つと同時に着手することで、
2倍、3倍の習慣引力がジャマするからだ。
A有効な1つの行動に絞る【行動ルールを複雑化しない】
B結果より行動に集中する【結果にこだわらない】
この原則にのっとったうえで、各ステップごとの対策が示されている。
《ステップ1 反発期》
この時期の継続のための対策は、ベビーステップ
どういうことかというと、「決して無理せず、小さくハードルをさげて始めること」
著者の実例でいうと、レーシックを受けるかどうか、怖いので迷っていた。
そこで、まずはパンフレットを取り寄せた。次に不安解消のために説明会に行き、
無料検査だけ受けた。すると、過程で恐怖心は薄れていき、
2週間後には実際に手術を受けていた――というエピソードを紹介している。
ベビーステップによって、100やるべきところを1しかやっていないとしても、習慣化
の観点からすれば、0と1の差は、100と1の差より大きいとしている。
元の小さな1歩で、モチベーションも大きく変わるという。
ベビーステップの設定には、
▼時間を小さくする(5分片付け、3分日記、10分読書など)
▼ステップを小さくする(1ページ読書、1行日記、部屋の1部のみ片付けなど)
が有効だ。
また、シンプルに記録することもポイント。
紙であれデジタル媒体であれ、やったかやらないか、「○×のみ記録」したり、
「○×プラス内容、数値」を簡単に記録するのがよい。
面倒なこと=挫折につながることを肝に銘じ、できるだけ楽ちんな方法で
記録する。
《ステップ2 不安定期》
この時期の対策は
@パターン化する
A例外ルールを設ける
B継続スイッチをセットする
@パターン化について。ステップ1でははじめの一歩として、ハードルを下げたが、
この時期はできるだけ一定のパターンに固定する(時間・やり方・場所など)
通勤時間や移動時間の活用など、一石二鳥で考えるとよい。
また、仮に週3日、英語の勉強をしたいなどの習慣でも、30日間は、
とにかく毎日やるのも重要。
A例外。急な予定の入る日や、体調の悪い日もあるだろう。
そんな例外時に、あらかじめ対応を考えておくと、ストレスがなくて助かる。
対応としては、ベビーステップで行動する、別日に振り替えをする、などだ。
《ステップ3 倦怠期》
ここでは
@変化をつける
A次の習慣を計画する
――などの対策が有効。
変化のポイントも、”一石二鳥”が有効だ。
例)片付けしながらリスニング。ウォーキングしながら音楽を聴く・・・などだ。
このほか、継続スイッチをあらかじめきめておくのもよいという。
これは自由に設定すればいいが、大きく分けるとご褒美を決める「アメ系」と、
危機感を利用した「ムチ系」のスイッチがあるという。
個人敵には、習慣クリア後にケーキ、ビールなどご褒美を設定する、アメ系が
性に合っている気がした。
シンプルに記録する、と書いたが、成長の記録としてグラフや表にして可視化する
ことは、やはりとても効果的だ。モチベーションアップにつながるので、ぜひ取り入れたい。
最後に1つ。著者は「農業ビジョン」で習慣の種をまくことを勧めている。
2人の農夫がいた。
1人は、ジャガイモ、ホウレンソウ、小松菜など短期間で収穫できる野菜のみ栽培した。
もう1人は、短期間で収穫できる野菜を6割、カボチャやゴボウ、スイカ、いちごなど
半年かかる作物に3割、柿、桃など数年かかる作物に1割の時間を費やした。
数年度、目先の収穫を重視した農夫の食卓は、代わり映えのしないメニューばかり。
中・長期も見据えて作物を育てた農夫の食卓は、さまざまな野菜やフルーツのならぶ
豊かな食卓となった。
2人農夫の差は「ビジョン」の有無。
習慣も同じで、すぐに結果が望めるものから、数年後に結果がでるものまである。
中長期も視野にいれ、様々な習慣の種をまくことが非常に重要といえる。
分刻みの時間にこだわるなど多少、細かすぎるきらいもあるが、気づきも多かった。
★★★★★ 5つ